100色100反

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四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)とは江戸後期、生活が豊かになってきて、より良い着物を着たいと思うようになった庶民に対して、幕府がとった「奢侈禁止令」による着物の色・柄・生地の細かい規定をかいくぐる事から出てきた言葉のようです。当時は麻か綿の素材に、色は「茶」「鼠」「藍」に限定されていましたが、その枠の中で試行錯誤して微妙な色合いを染め上げていったと言います。
48色100色だけというのではなく、実際は何百という色があったので、色数というより象徴として「多色」を表す言葉なのです。
イヌイットには雪を表す言葉が数百もあるというのは俗説だそうですが、江戸の世には確かにグレーだけで何百もの名称がありました。明治期になって来日するようになった西洋人が「貧しくも、豊かな文化の人々」と記述しています。「貧しい」と「貧困」とは違います。このことは何かこれからのわたしたちの道標となるようなイメージも感じられます。日本人はごく普通の人でも色を見分ける能力が高い事は実証されているようですが、この素晴らしい土壌を継承すべく、34年間培ってきた「染め」の技術によってお手伝い出来ればと思います。
江戸の茶色、鼠色は多くが一般的にダークで濃いめのようです。
シルクギャラリーでは21世紀の現代に相応しいと思われる
新たな「四十八茶百鼠」を提
案したいと思います。


そして、シルクギャラリーの色無地のもう一つの大きな特徴は、オリジナルの「地紋」にあります。「
紋紙」の時代ではできなかったでしょうが、
コンピューター・ジャガードという技術により、かなり自由に「模様」を生地に折り込むことができるようになりました。 当工房では「デザイン」をして、「織りのデータ」にまで完成させたものを、京都の丹後の特別な機屋さんに持っていって、オリジナル生地を追ってもらうことに成功いたしました。 10数年のうちにその数は64種類(2020年1月現在)にまで増えております。
半分ほどは古典ベースの模様ですが、あとの半分は現代的なおしゃれ感覚の地紋です。

以下いくつかお見せいたします。




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正倉院の模様を織り出すためのデザインソースを色分けしたもの。色によって織り組織を変えています。 このデザインでせ織り上がったものがこれです。
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こちらは音楽をテーマにした生地です。   ちょっとマニアックなので遠慮がちですが、敢えて解説させていただきますと、画家のグスタフ・クリムトの絵に「ベートーヴェン・フリーズ」というのがありまして、34mの長さの大変な大作なのですが、この絵へのオマージュのつもりでして、クリムトの絵に特徴的な、不思議なグルグル渦巻や目玉模様や植物の蔓のようなものが登場いたします。 そしてピアノの鍵盤と、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光の曲」第一楽章の右手の部分の楽譜を織り込んであります。 私は小学生の一時期、「ピアノ」を習っていたのですが、ご多分にもれず5年生になるところで挫折して、心に引っかかっていましたが、還暦を期して少しずつ再開しました。 この生地はいわば、自分を鼓舞するためでもありますが、大好きなベートーヴェンのピアノ曲への「讃歌」でもあります。
どうかこの生地によるお着物をお召しになられて、演奏されるとか、コンサートに行かれるとかしていただけたら作者冥利に付きますので、是非お勧めしたいです。
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以下、更紗模様、辻ヶ花模様、薔薇模様、(宝石をアレンジした模様、題して)「仮面舞踏会」等々、現在も新たな模様が生み出されて行っています。
ちなみにそれぞれ、帯生地バージョン、(薄手の)紋紗生地バージョンがあります。
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「100色100反」は2013年11月の個展にて発表されました。
以来日本全国、様々なスペースで展示してまいりました。
中でも日本橋三井ホール「東京キモノショー」での7mの高さからのグラデーション展示は圧巻でした。
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市場に出ていない特殊な記事を織っている丹後の機場です。

https://youtu.be/xSHucO9hQ54

https://youtu.be/t32BKUqd8Mc
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色の和名辞典から100の色を選びました。普通は小さい色見本の布を作って、その中から選んでいただくのですが、私は一つの色に一つのオリジナル地紋の生地を使って100の色を100の反物に染めました。
この反物を着装していただくと、出来上がりのイメージが理屈抜きで体感していただけるので、普通の方にも違和感なくオーダーしていただく気持ちになっていただけると思います。。

是非シルクギャラリーのオリジナル生地による色無地をお召しいただけますよう。
ウェブショップの方からお求めいただけます。
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